戻りたくても戻れない淡い恋の話

これは私が20代前半の頃の話しです。

彼氏募集中だった私は、

友人から4つ年上の飲食店従業員の男性を紹介してもらいました。

彼の家まで電車で30分と結構な距離。

最初はメールでやり取りをする程度だったのですが、

互いに気になり始め、ついに会う事になりました。

約束の日。

彼は車を持っていたので、遠いにも関わらず迎えに来てくれました。

待ち合わせしたのは夜8時ぐらいだったと思います。

身長は183センチで細身、少し長めの茶髪で日本人離れした顔立ちです。

私との身長差は20センチぐらいあって、いつも彼を見上げていました。

彼は人見知りなのか、目を見て話してもらえなかったです。

私がわざと顔をのぞき込んだりしていました。

そうすると恥ずかしそうにはにかんで笑ってくれます。

初めて会った日、泰司の家に行くことになり一夜を共にしました。

彼がベッドに腰かけて煙草を吸おうとしている時です。

一瞬、衝撃が走りましたが受け入れている私が居ました。

背中に大きなペイントが入っていたのです。

目の前の事実に目を背けず、彼の背中に唇を触れさせて、

彼を包み込むように後ろから手を回しました。

今でも忘れませんが、その時、彼は泣いていました。

私は何も聞かず、何も言わずにそのままいつの間にか寝てしまいました。

目が覚めると

彼「腹減ったから何か食いに行かない?」

という事で何故か回転寿しに行きました。

初めてのデートが回転寿しってどうなの?と思ったのですが、

一緒に居るだけで落ち着いたし、

よく喋るわけでもないのですが楽しかったです。

それからも背中の事は一切口にしませんでした。

彼は、シンクタンクというアーティストが好きで、

私も気に入ったのでアルバムを買ったりしました。

彼が

「ドライブに行こう」

というので、行ってみると心霊スポット。

私は少し霊感があるので、これ以上足を踏み入れるとヤバいと思い

彼を必死に止めました。

そんな私たちは、傍から見ても普通のカップルに見えていたと思いますし、

私たちも本当に幸せを実感していたと思います。

ある日、

彼「一緒に住まない?」

と言われた事がありました。

その時、私は断りました。

仕事があるし、会社まで遠くなるからと言ったと思います。

今思えば、何故お互いの中間地点に引っ越して住もうと言わなかったのか。

少し後悔しています。

彼とは2年ほど交際しましたが、結果的に自然消滅する形となりました。

それから暫くして、私は体調不良で会社を辞めて実家に戻りました。

無職の時期、夜10時ぐらいに1人でテレビを観ていると、

知らない番号から着信が入ります。

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普段、知らない番号には出ないのですが、

その時は自然と電話に出ていました。

私「もしもし?」

彼「あ、俺。分かる?」

私「誰ですか?」

彼「泰司だよ」

私「ん~?分かりません」

彼「何しているの?」

私「家にいますけど」

彼「実家に帰ったの?」

私「…」

彼「じゃぁね」

このやり取りで電話は終わりました。

私はその時、本当に誰だか気づきませんでした。

そして、電話を切った後に思い出したのです。

(あ…泰司かぁ)

あの頃と変わらない優しい声をしていました。

当時の事がフラッシュバックして、スマホを手に取りましたが、

私は掛け直しませんでした。

それから、電話が掛かってくることはありません。

切なく、淡いエピソードです。